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ソムリエ日記

ワインを知る旅 #日本・北海道編

岩崎 麗

2月 雪が降り積む頃

北海道の岩見沢、そして余市を訪れました。

雪はたくさん積もっていたけれど、
この日はぴかぴかの晴天!!
澄んだ空気と真っ青な空が最高に気持ちいい。

今回お伺いしたのは
岩見沢のKondo ヴィンヤードさん
余市のドメーヌ タカヒコさん
余市のリタファーム&ワイナリーさん

どちらも品質にこだわった少量生産のワイナリーなので、
都内ではなかなか入手できないワインの生産者さんです。
(なので訪問出来てテンション上りまくりです)

まず最初にお伺いしたKondo ヴィンヤードさん。
2017年に出来たばかりの新しいワイナリー。
ブドウ栽培は2007年からされていますが、これまでは委託醸造※でワインを作っておられ、
2017年からご自身のワイナリーでワインを仕込んでいらっしゃいます。

※ワインの醸造設備は規模が大きく、費用がかかるため、
最初は自分で持っていない方も多いです。
そういった方のワインを仕込む場所を既存のワイナリーさんが貸してくれることがあります。
ワインの醸造を委託する、ということです。(作業は自分でするんですが)
ワイン用ブドウが育つまでには5年程かかり、更にそのブドウからワインは一年に一度しか作れないので、
ワイン作りを始めたばかりの頃は収入がなかなか得られません。
だからこそ、設備投資をしなくてもワインを作るために受託醸造所は必要なのです。

シンプルで清潔感のあるワイナリーの前で近藤さんがお出迎えしてくださいました。
穏やかなお人柄がにじみ出ています。

ブドウの樹は、休眠期(収穫が終わり、新芽が芽吹く前のお休み期間)で雪に埋もれています。
北海道は当然雪が多いわけですが、
冬の冷たく厳しい風にさらされるより、雪の中の方が暖かいので樹が守られるそうです。

とはいえ、雪の重さで樹が倒れたり折れたりしないように、
収穫が終わるとすぐに畑での作業が必要となります。
そして、雪解けと共に今度は雪がなくなった畑で樹が育ちやすいようにまた別の作業が必要になります。
つまり、雪の積もらないエリアではかからない手間が最低でも二回多くなるのです(!)

冷涼な気候がワイン用のブドウ栽培には向いていると言われる一方で、
やはり積雪があるということはかなりの苦労のようです。

そんな環境下でブドウの樹を守り、大切に育てて収穫したブドウだからこそ、
近藤さんは、ワインの醸造過程においてなるべく人的介入をしたくない、とおっしゃっていました。

ブドウにストレスがかからないように優しく潰し、
その地にいる野生酵母※に任せて発酵させます。
酵母が順調に働くことばかりではなく時間も手間もかかるけれど、
ブドウの持つ個性をしっかりと反映したワインになるそうです。

※ワインを作る際に使われる酵母には、野生酵母と培養酵母があります。
培養酵母はワイン作りしやすい性質を持っているので、
作り手がワイン作りをコントロールできます。そして品質を安定できるというメリットがあります。
野生酵母を使うと、その酵母の気まぐれによって発酵がゆっくりだったり、何なら途中で休んでしまったりと、
気長に付き合わなければなりません。
一般的にブドウの糖分が全てアルコールに変わる『アルコール発酵』が完了するまでには二週間ほど必要ですが、
近藤さんが作っているワインは、一年経ってもまだアルコール発酵が終わらない、とのことでした。
安定を取るか、個性を取るか、といったところでしょうか。

発酵中のブドウとその果汁を入れておく容器も出来る限り木の樽を使いたいとのこと。
通常、ステンレスタンクを使うことが多いのですが、
近藤さんの使っているステンレスタンクは1つだけでした。

瓶詰前のワインを試飲させていただきます。
白はステンレスタンクにあるものを。
ソーヴィニヨン・ブランという爽やかな柑橘の香りが特徴的な品種を使っています。

素直に、美味しい。
派手さはありませんが、ブドウの味わい、香りがしっかりと感じられ、
染みわたるようです。

そして木の樽にある赤ワインもいただきます。
こちらはピノ・ノワールという、フランス ブルゴーニュで世界最高峰のワインを生み出している品種です。
日本で良質なピノ・ノワールを作れるのは北海道、と言われており、近年北海道産のピノ・ノワールは注目されています。

淡く明るいルビ―色。ラズベリーや小梅のような香り。
酸味がいきいきとしていて、淡いけれどじんわりとした旨みを感じるワイン。

丁寧に育てたブドウを大切にワインにしたんだろうな、ということが伝わってきました。
ワインって農産物なんだと改めて実感。

もっとはっきりとした味わいのワインが好きな方もいるでしょうし、
TPOによってはそういったワインが求められます。

でも、なんというか日本人らしいというか、
丁寧に丁寧に手間暇かけて作った優しい味わいのワインは、
やはり日本人にはしっくりくると感じました。

そして、最後に、近藤さんの新たな挑戦で作っているワインのお話しもお聞きできました。
それは、アンフォラという土の甕で仕込んでいるワイン。

…あれ?アンフォラ?
そうです!過去の記事にありますが、私が昨年訪れたジョージアでワイン作りに使われている甕のことです!

なんと近藤さんもジョージアのワインに魅了され、ジョージアを訪問し、
アンフォラでのワイン作りをご自身で見て来られたそうです。
そして、自分の求めるワインを作るにはアンフォラが必要だ!ということでジョージアからアンフォラを輸入し、
更には北海道の焼き物作家さんに小さいサイズのアンフォラを作ってもらい、
ワインを仕込んでいるとのこと。

なんという偶然…。勝手にご縁を感じて感動してしまいます。笑

そのワインはまだ甕で熟成中で、リリースは2020年初春とのこと。
今から楽しみでなりません。

そんな、穏やかだけれどワインに対する情熱はものすごく熱い、
チャレンジ精神旺盛な近藤さんにお会いし、
ますます北海道ワインに魅了されたのでした。

続く。

この記事を書いた人 & 編集後記

岩崎 麗

2012年 入社 GARB 江ノ島にてサービスを担当。同年ソムリエを取得!現在は運営推進部にてワインを始めとする飲料の監修を担当しながら、社内のワイン担当の教育や、外部のワインスクールで講師も務めています。 ワインを愛してやまないガストロノミーなクールビューティ。